大人のアトピー・子どものアトピー
3月3日の桃の節句も終わり、季節は春の色合いが段々と濃くなってきます。
梅の花が咲き、街路樹の桜の木もわずかに芽が膨らんできています。
卒業式シーズンや人事異動の発表などもあるこの時期は、新しい生活への期待と不安、またその準備に追われて心も体も乱高下。
そして、この時期もう一つ悩みの種が。「花粉症」
もう、すでに花粉が飛びかっていて、多くの人が悩まされています。
ですが今回のテーマは「花粉症」ではなく、「アトピー」。
「アトピー」という言葉は、ギリシャ語の「atopia」が語源で、「奇妙な、見慣れない、不思議な」病気という意味で、1920年代に花粉症、気管支喘息、アレルギー性鼻炎等を指していました。
しかし、現在は「アトピー」というと「アトピー性皮膚炎」のことを意味しています。
当院へ来院してくださっている方の中にも、花粉が飛びかい始めたころから「アトピーがひどくなってきた…」と。
アトピーやアレルギー症状は、何かしらのアレルゲンがあるから、それに対して激しい抗原抗体反応を起こし症状が出ます。
しかし、大人のアトピーは心因性とも深く結びついているともいわれます。
家庭環境の変化や職場の変化、対人関係、またハードワークなどによる睡眠不足…など、様々なストレス。
ストレスの原因を把握し、そのストレスと上手に向き合えるようになると症状が軽減されることも多いようです。
子どもアトピーは、両親がアトピーだと約50%がアトピー発症のリスクにあると言われています。また片親がアトピーでは約30%。
乳幼児期のアトピーは、成長するにつれて、喘息やアレルギー性鼻炎など症状を変化させてアレルギー症状を発症します。これをアレルギーマーチと呼びます。
必ずしも全員が、このアレルギーマーチの経過をたどるわけではなく、約80%の子は学童時期までに自然に治るともいわれています。
そして、子どものアトピーも様々なストレスや親の過剰な神経質さが、症状を悪化させているとも言われてます。
私は、以前、鍼灸師になる前に、素材や添加物などにこだわったパンや菓子を作る会社で働いていたことがあります。その会社で販売促進の部署にいて、消費者の方々との交流会などでお話をさせて頂いたことが何度かあります。
そのような集まりに来て下さる方は、やはり食の安全に強い興味を持った方々が多く、実際、食生活にもとても気を付けている方が多かったです。
そんな中、一つ気になることがありました。
小さいお子様を持つお母さまがいて、「うちの子はアトピーなんです」とおっしゃるのです。さらに「子どもがアトピーなどにならないように、妊娠中から食事にはかなり気を付けていて、アトピーの原因となるような食材は控えるようにしていたのに…」というのです。
他の交流会でもこのような方が何人かいました。重症化しているアトピーの子のお母さまは、日頃から食事や生活環境にもかなり気を配っています。
もう十数年も前の事です。その頃は、あまりアトピーと心の問題を今ほど取り上げて下さるドクターもいらっしゃらなかったので(あまりいなかったと思います…。でもそうでなかったのなら、すみません)、とても気になりました。
私の他にも販促のメンバーがいて、同じような経験をしているようでした。
子どもを思う親の気持ちに嘘はありません。子どもを思うからこそ、その子の健康にも気を付けます。
けれども、それが度を越してしまった過剰な心配が、子どもの心にも影響を与えているような気がします。
私自身は、あまり薬に頼りすぎることはないのですが、決して薬を否定する気持ちはありません。
よく、患者様から「ステロイドは使わない方がいいですよね?」と聞かれます。確かにステロイドを使わなくてもいい状態にもっていきたいと思います。それが正直な私の考えです。
でも、だからと言って症状がひどく痒みも強い。そして「ステロイドを使ってはいけないんだ」と思う気持ちが、ストレスを生んでいるのだったら、そのストレスもまた、症状を悪化させているのではないかな…。
なので、私は「それがストレスになるようでしたら、使っていいと思います。上手に使ってください」と答えます。
実際、来院されている方で、「今までは絶対に使わないようにしようと思って、いろいろな方法を試した。でも、辛いしなかなか治らない。でも、今回は鍼灸と併用して治療してたら、病院だけの処方よりも民間のいろいろな療法よりも何よりも治りが早い。ストレスもない」と、おっしゃってくださり、現在はステロイドを使用しておりません。
この方は、症状が緩解している現在も定期的に通ってくださっています。
継続して行う鍼灸治療によって、段々と治る身体、治りやすい身体を作っていきます。
アトピーだけに限らず、ストレスの原因となっているものと上手に向き合い、対処していくことによって症状が緩和されていくこともあります。